世界的に評価される自社ブランドを大切に、製造業としてものづくりの支援を続ける企業

「タカラ株式会社」は1933年に創業し1950年に設立された歴史ある企業。大手メーカーの依頼を受けた自転車やオートバイのブレーキやクラッチの部品製造で高い評価を受け、1964年には交換用ブレーキパッドの自社ブランド「ベスラ（Vesrah）」を立ち上げ、国内のみならず世界的に受け入れられる存在となります。

同社はこのブランドの積極的なプロモーションを展開。日本とアメリカにレーシングチームを持ってロードレースに参加するなどして知名度を高め、「ベスラ」のブレーキパッドはこれまで、高い品質で多くのファンを獲得してきました。

一方で製造業として顧客のさまざまな要望を受け、3Dプリンターや3Dスキャナーなどの最新技術を導入し、プラスチック製品などさまざまなOEM生産のニーズにも応えています。本社は東京メトロ丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩4分。加えて大阪営業所、茨城県笠間市内には3カ所の工場を構えています。

同社は以前から働き方改革に力を入れ、なるべく残業をしないような労働環境を整える努力を続けています。具体的には、どの業務に時間を取られているのかを洗い出し、それが改善できるものなのかをしっかりと検討したうえで、「デジタル化できるものであれば積極的に転換を進めました」と語るのは常務取締役の下村孝さん。

ただ残業を減らすことだけではなく、的確な業務見直しを行っていたことがコロナ禍後のテレワーク実施などに役立ちます。部品の出荷は本社で行う必要がありましたが、出社時間を柔軟にずらし土曜出勤をなくすなど、社員が他者との接触機会を極力減らす対応ができているそうです。

下村さんは、「事業内容は変わっていませんが、対面での営業やお客様が行うイベントなどがほぼなくなった状況で営業担当者がどうすれば仕事を進められるのかを改めて考えています。内勤業務もより一層の見直しが必要です」と、一段の効率化を見据えています。

下村さんは、「弊社には真面目で黙々と仕事をする人が多い」と言います。営業担当者が向かう先は主にオートバイ関係の部品を取り扱う店舗。ただ単にお客様の要望に応じるだけではなく、「商品の入れ替えなどを積極的に提案できる能力が必要です」と続けます。同社は近年、この営業職での女性活躍を求めて採用を始めています。女性ライダーが増えていることもあるのかもしれませんが、2人の女性営業担当者のうち1人は特にバイクに興味があって入社したのではないそうです。
「1人はライダーでレース活動をしながら仕事をしていますが、もう1人は特に興味もなかったようですが、男性ばかりのイメージが強かった業界に非常に上手く入って行って話を聞いてもらえているようです」と下村さんは説明します。会社の福利厚生について伺うと、「産休・育休制度などはもちろん揃っていますが、男女の関係なく充実していると考えています」と続けました。

社員に対する待遇の象徴とも言えるのが同社の社員食堂。大きなビルに入る大企業では珍しくありませんが、中小企業で現在でも社員食堂を維持しているのは稀なことです。「先代会長の『まずお腹いっぱい食べられることが働くうえでの大前提』という考えを受け継いでいます」と、新宿の真ん中で月額5,000円払えば昼食が食べられる環境にあると言います。
同社の今後について下村さんは、「弊社は○○屋といった仕事の枠は決めていません。何にでもトライするという社風があります」と言います。「ベスラ」ブランドを絶やすことなく大切に展開しつつ、3Dプリンターや3次元測定器などで製造業としてお客様の要望に応えていきます。「プラスチック流動解析で3Dデータを作成し、ものづくりの支援も行っています。かつては職人の勘に頼っていたものを数値化して、引き継いでいけるようになるのです」と、自社と製造業の将来を見据えました。